AIは食事写真の何を外すのか——利用者の訂正の内訳を運営元が公開
「食事の写真を送るだけで、AIが栄養を計算してくれる」——AI食事管理アプリの説明はたいていこう始まります。では実際のところ、AIはどのくらい当てているのでしょうか。
この問いに数字で答えている運営元は、私たちが知る限り多くありません。当社も含めて、精度は語りにくいテーマだからです。
そこで本記事では、“専属AIトレーナーを雇う”という発想のAI食事管理サービス「VITL(バイタル)」の運営元として、利用者がAIの解析結果をどう訂正したか——つまりAIが外したとき、その中身は何だったのかを、集計値で公開します。
この記事でわかること(先に3行)
- AIが最もつまずくのは「何を食べたか」ではなく「どれだけ食べたか」。 訂正のうち最も多かったのは分量でした。
- その理由は単純で、写真に重さは写らないからです。 器や周りのものから見当はつきますが、最後は確定しません。分量と味つけ・調理法を合わせた62%は、写真だけでは決めきれない情報でした。
- だからVITLは、写真に一言を足せる設計にしています。 「ご飯は少なめです」の5秒で、その62%が埋まるからです。
ひとことで言うと—— 「写真だけで全部わかる」というのは、どこの会社のAIであっても無理があります。大事なのはわからない部分をどう扱うかで、この記事はその中身を数字で開示するものです。
この記事が出していない数字
数字の読み違いは、一度広まると取り消せません。なので何を出していないかを先に書きます。
この記事は「AIの正解率」「間違い率」を出していません。 ○%外す、という数字は一切ありません。出せないからです。
お店に置かれた「お客様の声」の箱を思い浮かべてください。集まった声を数えれば、どんな不満が多いかはわかります。でも、お客さんの何%が不満だったかは絶対にわかりません。何も言わずに帰った人が数えられないからです。
この記事の材料も、それと同じものです。
- 気づかれなかった間違いは、記録に残りません。 材料は、利用者が「ここが違う」と教えてくれた訂正だけです。AIがそれらしく外していて誰も気づかなければ、データには出てきません。
- 言いやすい間違いと、言いにくい間違いがあります。 「ひとつ足りない」は伝えやすく、「全体的に少し多い気がする」は伝えにくい。数字は実際の間違いの分布ではなく、伝えられた間違いの分布です。
- 訂正がない記録は、正解だったとは限りません。 気にせず流した場合も、そもそも見ていない場合も、訂正は入りません。
つまり、この記事の数字は—— 「AIが何%外すか」ではなく、「外したとき、その中身は何だったか」の内訳です。ここから「このアプリはX%間違える」を計算することはできません。
では、なぜそれでも公開するのか。外し方の”クセ”は、率がわからなくてもはっきり見えるからです。そしてそのクセは、AIに食事を任せる仕組みを選ぶときの、かなり実用的な判断材料になります。
集計の前提
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ | VITL利用者の食事記録のうち、写真つきかつ訂正が記録されているもの |
| 該当記録数 | 3,100件超(2026年8月5日時点) |
| 分類の標本 | 上記から2つの時期を切り出した85件・訂正93件(2026年7月22日および8月4〜5日) |
| 分類方法 | 訂正の内容と、訂正前後で変わった値を突き合わせ、内容で分類 |
| 除外 | 写真のないテキストだけの記録(AIの画像解析を経ていないため) |
補足として、以下を明記します。
- 1件の訂正が複数の型に該当する場合があります(分量と見落としを同時に伝えるなど)。そのため各割合の合計は100%を超えます。
- 標本は93件で、各割合の誤差はおよそ±10ポイントあります。 「43%と28%には差がある」とは言えますが、「19%と12%は違う」と言い切れるほどの精度はありません。
- 公開しているのはすべて集計値です。 利用者の写真も、訂正の文面も、一切掲載していません。VITLのプライバシーポリシー第4章で、統計情報を公表する場合も個人が特定されない集計値のみを用いると定めているためです。本記事に登場する言い回しの例は、説明のために書き起こした一般的なもので、実際の記録ではありません。
訂正の内訳
| 型 | 割合 | 内容 |
|---|---|---|
| 分量のズレ | 43% | 実際に食べた量が推定と違う。半分残した、分け合った、など |
| 取り違え | 28% | 品目は検出しているが、別の食材と判定している |
| 調理法・調味 | 19% | 油を使っていない、脂身を落とした、調味料をかけていない、など |
| 見落とし | 12% | 写真に写っているのに検出されなかった品目がある |
| 過検出・食べ残し | 10% | 写っていないものが検出された、あるいは手を付けなかった |
| (参考)追加摂取 | 8% | 後から食べたものを追記した——AIの誤りではありません |
| 成分表示による訂正 | 5% | パッケージの栄養成分表示の数値で置き換えた |
| 日付・食事帯の訂正 | 2% | 朝食として記録されたものを昼食に直した、など |
※訂正93件に占める割合。1件が複数に該当するため合計は100%を超えます。
「追加摂取」の8%は、AIが何も間違えていない訂正です。 食後にコーヒーを飲んだ、午後に間食したといった、あとから起きたことの追記です。訂正ログをそのまま「AIの誤り」として数えると、この分だけ1割ほど過大に見積もることになります。本記事では、以下の議論から除外して扱います。
最大の発見——6割は「写真だけでは決めきれないもの」
内訳を眺めていて最初に目についたのは、分量43%が単独で最大だったことです。品目の取り違え(28%)よりも、見落とし(12%)よりも多い。
そして分量に調理法・調味(19%)を足すと、合計は62%になります。この2つには共通点があります。どちらも、写真をどれだけ見つめても最後は確定しない情報だということです。
分量——写真に重さは写らない
同じ茶碗に盛られたご飯が120gなのか180gなのかは、写真を見ても決まりません。カメラは見た目を写しますが、重さは写しません。 そのうえ器の大きさが人によって違うので、比べるものさしが写真の中にないことも多い。
「半分残した」「二人で分けた」に至っては、もはや画像の問題ですらありません。その写真が食べる前のものか、後のものかという話だからです。
調理法・調味——表面からは確定できない
炒め物に使った油が小さじ1杯なのか大さじ2杯なのか。サラダのドレッシングをかけたのか、別添えのまま残したのか。煮込みから脂を取り除いたのか。
これらはでき上がりの見た目にほとんど出ません。でも、カロリーには数百kcal単位で効きます。見た目が同じで中身が違う——写真がいちばん苦手なパターンです。
ただし、「まったく手がかりがない」わけではありません
誤解のないように補足します。写真から見当をつけることは、できます。
丼なのか茶碗なのかで、盛られている量の見当はつきます。隣に大きさの分かるものが写っていれば、それがものさしになります。これは人間が無意識にやっていることと同じで、AIにもできることです。
そして、写真の中で最も強い手がかりは「文字」です。
VITLの解析は、写真に写り込んだ手書きメモ・パッケージの栄養成分表示・商品ラベルを読みにいきます。 そこに「ご飯150g」と書いてあれば、それは推定ではなく事実として扱えます。栄養成分表示が写っていれば、その数値をそのまま使えます。推定が事実に変わる、唯一の瞬間です。
つまり、こういうことです—— 手がかりがあれば、幅は縮みます。 器の見え方で見当がつき、書かれた数字があれば確定します。 それでも、何も手がかりがない一枚の写真から重さを言い当てることはできません。 縮むのと、決まるのは、別の話です。
つまり、これは「精度が低い」という話ではない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
この62%は、AIが賢くなれば消える種類の間違いではありません。 どんなに性能が上がっても、手がかりのない写真から重さを確定させることはできないからです。足りないのは能力ではなく、材料です。
いちばんわかりやすい確かめ方があります。同じ写真を、経験豊富な管理栄養士に見せてみてください。同じところで止まります。 「これ、ご飯何グラムですか」「油はどのくらい使いました?」と、必ず聞き返すはずです。プロでも、聞かなければわからない。人間が聞くことを、AIだけ聞かずに当てられるはずがありません。
つまり、こういうことです—— 写真から栄養を出すのは、レシピの材料表を見ずに料理の値段を当てるようなものです。見た目でかなりのところまでは言えますが、最後は「何をどれだけ使ったか」を聞かないと確定しません。 だから私たちは、この62%を直すべき欠陥ではなく、最初から前提にすべきものとして扱っています。VITLが写真に一言を添えられる作りになっているのは、その前提に対する答えです(後で詳しく書きます)。
もうひとつの発見——AIは見落とすのではなく、似た別物と言い切る
ここまでは「写真に写っていないもの」の話でした。では、ちゃんと写っているものについてはどうか。こちらは取り違え28%・見落とし12%・過検出10%の3つです。
そして、直感と食い違うことが起きていました。
「AIは、写っているものを見落とすのが心配」——多くの方はそう思われるはずです。ところが実際は逆で、見落とし12%に対して、取り違えが28%。2倍以上、取り違えのほうが多いのです(標本93件・誤差±10ポイントの範囲での話です)。
AIは、見逃すより「似た別のもの」だと言い切ります。 見た目の近い肉の部位どうし、白身の魚どうし、切ってしまえば見分けのつかない根菜どうし——このあたりで起きます。
そして、使う側にとってはこちらのほうが厄介です。
- 見落としは、すぐ気づきます。 食べたはずの納豆が一覧に無ければ、一目でわかります。
- 取り違えは、なかなか気づきません。 品数は合っていて、名前もそれらしく、カロリーも不自然ではない。間違っているように見えないのです。
つまり、こういうことです—— テストの答案で、空欄なら「あ、抜けた」と気づきます。でも、それらしい答えが書いてあると、見直さずに提出してしまいます。 AIの間違いは、後者のほうが多い。 だから「あとから直せること」が効いてきます。気づいたときに直せる作りになっていないと、それらしい数字のまま静かに積み上がっていきます。
これはVITL固有の話ではありません——ただし他社を測ってはいません
ここまでの数字は、VITLの利用者から寄せられた訂正の集計です。では他のAI食事管理サービスはどうなのか。
わかりません。測っていないからです。
本記事では他社サービスとの比較を一切行いません。手元に比較できる実測データが無い状態で「うちは他社より当たる」と書けば、それは根拠のない優良誤認になります。同一の写真セットを複数のサービスに同じ条件で通す比較検証は、別途取り組む予定です。測ってから書きます。
そのうえで、ひとつだけ確かなことがあります。一枚の写真から重さを確定できないというのは、実装ではなく入力の性質です。 分量が写真だけで決まらないのも、調理に使った油の量が見た目に出ないのも、VITLの都合ではありません。どんなに優れたAIであっても、写真に含まれていない情報を、写真だけから確定することはできません。
つまり、こういうことです—— 「うちのAIは他社より当たります」と言うつもりはありません。測っていないので言えません。 ただし、写真に重さが写らないのは、どのアプリを使っても同じです。差が出るとすれば、精度の高さより先に、わからない部分をどう扱う作りになっているかのほうだと考えています。
それでも「写真を送るだけ」と言い続けている理由
ここまで読むと、こう思われるかもしれません。「写真だけでは決まらないと言いながら、広告では”写真を送るだけ”と書いているじゃないか」と。もっともなご指摘なので、はっきりお答えします。
「写真を送るだけで始められる」は、事実です。そしてそこは、これからも変えません。
食事の記録がなぜ続かないのか。理由はほぼ一つで、面倒だからです。食品名を検索し、グラム数を入力し、調味料を選ぶ——この作業が毎食3回、365日。続く人のほうが珍しい。だからVITLは、写真1枚で終わっていい設計にしています。一言を添えるのは任意で、義務にはしていません。
そのうえで、私たちが大事にしていることは2つあります。
- 記録が続くこと。 続かない仕組みは、どれだけ正確でも役に立ちません。だから入り口は最軽量にする。
- 数字が現実からずれないこと。 続いても、中身がずれていれば意味がありません。だから直せる余地を必ず残す。
この2つは、放っておくとぶつかります。正確にしようとすれば面倒になり、簡単にしようとすればずれる。 そこでVITLが選んだのは、「軽く始めて、気になったところだけ直せる」という形です。
つまり、こういうことです—— 「写真を送るだけ」は入り口の話で、「一言添えられる」は、こだわりたい人のための出口の話です。両方あって一つの設計です。 私たちが避けたいのは、“全部おまかせ”を名乗って、ずれた数字を黙って返し続けることです。それは親切に見えて、いちばん不誠実だと考えています。
この記事で自社の外し方を公開したのも、同じ理由です。わからないことを「わかる」と言わない。 そのうえで、わからない部分を埋める手段を用意しておく。それがVITLの立ち位置です。
「写真+ひとこと」で、何が埋まるのか
具体的には、この3つです。どれも数秒で終わります。
- 写真を送るときに一言添える。 「ご飯は少なめです」「油は使っていません」「半分残しました」——この一言で、さきほどの62%が埋まります。写真に手書きのメモを写し込んでも同じように読み取ります。
- 結果を見てから直す。 「これは鶏むねではありません」と伝えれば、そこから計算し直します。取り違えに気づいたときの出口です。
- よく食べるものは覚えさせる。 「定番食品メモ」に登録しておけば、毎回説明する必要がなくなります。
この記事の集計そのものが、実際に寄せられた訂正です。3,100件を超える訂正が記録されているということは、それだけ多くの方が実際に一言を添えてくださっているということでもあります。
つまり、こういうことです—— 5秒の一言で、写真だけでは決まらなかった6割が埋まります。 面倒に見えるかもしれませんが、逆から見ると、その5秒を渡す先が無いアプリでは、その6割は永久に埋まりません。
記録の数字がずれたままだと、カロリーは足りているのに特定の栄養素が足りない——いわゆる新型栄養失調のような状態は、いっそう見えにくくなります。数字を合わせること自体が目的ではなく、見えるようにするために合わせる、という順番です。
なお、利用者アンケートでも写真の読み取りに関する要望が最も多く寄せられており、その内容の多くは「解析できていない」ではなく「写真に写っていない情報を求められている」ケースでした。詳細はVITLの評判・口コミの記事で、アンケート160件の集計として公開しています。
まとめ
VITL利用者の訂正93件を分類してわかったことを、平たく整理します。
- AIがいちばんつまずくのは「何を食べたか」ではなく「どれだけ食べたか」(訂正の43%が分量)
- その6割は、AIが賢くなっても消えません。 手がかりがあれば幅は縮みますが、確定はしないからです(分量+味つけ・調理法で62%)
- AIは見落とすより、似た別物と言い切るほうが多い(見落とし12%に対し取り違え28%)。しかも言い切られると気づけません
- これはどこのアプリでも同じです。写真に重さが写らないのは、実装の問題ではないからです
- だから答えは「精度をひたすら上げる」ではなく「足りない分を渡せるようにする」。 VITLは5秒の一言でそれができます
食事管理AIを選ぶときの、たった一つの見分け方
もし今、どのアプリを使うか迷っているなら、「AIが全部やってくれます」という説明よりも、次の一点を見てください。
わからないことを「わかりません」と言える作りになっているか。そして、そこを自分で補えるか。
写真だけで完結するほうが、説明としては魅力的に聞こえます。ただ、写真から確定できない部分がある以上、その分はどこかで推定に頼っていることになります。推定だと分かっていれば直せますが、分からなければ直しようがありません。
私たちがこの記事で自社の外し方まで公開したのは、その見分け方を、業界の当たり前にしたいからです。
VITL(バイタル)について
VITL(バイタル)は、ゼロジム369株式会社(福岡)が開発・運営するAI食事管理サービスです。食事の写真を送ると、AIがカロリーとPFCを推定し、栄養バランスを代謝スコアとして点数で返します。サービスの概要はVITL公式サイト、および「VITL(バイタル)とは」をご覧ください。利用者の食事記録を集計した別の報告として、食事記録1,262日分で見たPFCバランスの実態も公開しています。
同名の他社・他サービスとの違い
「VITL」という名前のサービス・業者は世界に複数存在します。日本のAI食事管理アプリVITL(vitl.jp・運営: ゼロジム369株式会社)は、以下のいずれとも資本・運営とも一切関係ありません。なお「VITL」は日本国内においてゼロジム369株式会社の登録商標です(商標登録第7053784号)。
- 英国のVitl(vitl.com) — パーソナライズドサプリメントや同名のカロリートラッカーアプリを提供する英国企業で、日本のVITL(バイタル)とは無関係の別会社です。
- 投資業者「VITL Financial Trading Limited」 — 金融庁は令和8年(2026年)5月、無登録で金融商品取引業を行う者としてこの名称を公表しています(出典: 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。日本のAI食事管理アプリVITL(vitl.jp)はこの業者と一切関係がなく、投資・金融商品を一切扱いません。
出典・一次情報
- VITLとは(サービス概要・機能・料金・運営会社)
- VITL プライバシーポリシー(第4章・統計情報の公表は個人が特定されない集計値のみ)
- VITL(バイタル)の評判・口コミは?——運営元が利用者アンケート160件の集計を公開
- 新型栄養失調とは(定義ハブ)
- 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」
本記事はVITL利用者の食事記録に付随する訂正内容を匿名で集計した統計情報であり、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。掲載している割合は「訂正が記録された食事記録における訂正内容の内訳」であって、AIの正答率・誤り率を示すものではありません。標本は93件であり、各割合には誤差があります。集計対象はVITL利用者という特定の集団の記録であり、他のサービスや一般的なAI画像解析の性能を示すものではありません。食事管理による変化には個人差があります。