食べ方は二極化していた——食事記録1,262日分で見たPFCバランスの実態
「日本人の栄養バランスの実態はどうなっているのか」を知ろうとするとき、たいていは全国平均の数字を見ます。ただ、平均という一本の数字は、ときに誰のことも説明していないことがあります。
“専属AIトレーナーを雇う”という発想のAI食事管理サービス「VITL(バイタル)」。記録するだけの一般的な食事管理アプリとは設計が異なり、送られた食事写真から栄養バランスを推定して次の一手まで返します。そのVITLに実際に記録された食事データを匿名で集計したところ、まさにそれが起きていました。
83人の1か月分・1,262日の食事記録を見ると、食べ方はほぼ半々の二つに分かれていました。糖質を抑える食べ方をしている人と、一般的なバランスに近い食べ方の人。この二つを一つの物差しで採点すると、実態とは違う数字が出ます。本記事は、その顛末と、二つの群で唯一そろっていたものについての報告です。
この記事でわかること(先に3行)
- 同じアプリの中に、正反対の食べ方をしている人がほぼ半々でいました。 糖質を控える食べ方の人が37人、一般的なバランスに近い人が37人です(VITL利用者83人・1か月分の記録から)。
- その83人を国の一つの目安で採点すると、実態とは違う数字が出ます。 糖質を控えている人は、そう食べている以上、目安から外れて当たり前だからです。
- それでも一つだけ、両方に共通していたものがありました。 たんぱく質です。83人のうち、目安の下限を下回った人は0人でした(記録している83人の中での話です)。
集計の前提
数字の読み違いを避けるため、先に前提を示します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 集計期間 | 2026年6月1日〜6月30日(日本時間) |
| 対象 | VITL利用者のうち、1日3食以上を記録した日が5日以上ある人 |
| 母数 | 83人・1,262人日(1人あたりの記録日数は中央値15日) |
| 集計方法 | 1人ずつ日々のPFC比率を平均し、その利用者単位の平均値を集計 |
| 除外 | 社内テスト用アカウント2件 |
この集計には、次の限界があります。いずれも数字を読むうえで重要なので、先に明記します。
- 日本人全体の平均ではありません。 対象は食事管理アプリを自ら使っている人たち、つまり食生活を変えようとしている集団です。一般人口の縮図ではありません。
- 記録されなかった食事は含まれません。 記録漏れがあれば、その日の摂取量は実際より少なく集計されます。
- 写真からのAI推定値です。 秤で計量した実測値ではありません。
- 食べ方の方針そのものは調べていません。 誰がどんな食事法を選んでいるかは記録していないため、以下の分類は記録された栄養素の構成から機械的に分けたものです。
つまり、この記事の数字は—— 日本人全体の平均ではありません。 食事管理アプリを自分で使っている83人が、2026年6月の1か月に記録した食事です。もともと食生活を変えようとしている人たちの集まりだと考えてください。 しかも量は、写真からAIが見積もった数字で、秤で量ったものではありません。「日本人はこう食べている」とは読まないでください。
食べ方は、きれいに二つに分かれていた
利用者83人それぞれについて、1か月の食事で脂質がエネルギーの何%を占めたかを並べると、こうなりました。
| 脂質の割合(%エネルギー) | 人数 |
|---|---|
| 30%以下 | 37人 |
| 30%超〜45%未満 | 12人 |
| 45%以上 | 34人 |
真ん中が薄く、両端に山があります。 全体の平均は38.6%ですが、その平均あたりにいる人はむしろ少数派でした。平均値は、二つの山のあいだの、ほとんど誰もいない谷を指していたわけです。
炭水化物の割合で三つに分けると、この構造がはっきりします。
| 群 | 人数 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 |
|---|---|---|---|---|
| 糖質を抑える食べ方(炭水化物40%未満) | 37人 | 25.6% | 56.1% | 17.6% |
| 中間(40〜50%) | 9人 | 19.4% | 34.0% | 47.7% |
| 一般的なバランス寄り(50%以上) | 37人 | 19.5% | 23.0% | 57.4% |
※各群の中央値(%エネルギー)
37人対37人。糖質制限のような食べ方を選んでいる人と、一般的なバランスに近い人が、ほぼ同数で同じアプリの中にいました。
つまり、こういうことです—— 平均は38.6%と計算できます。でも、その平均のあたりにいる人がいちばん少ない——そういう分かれ方をしていました。 大人と子どもが半々の部屋で「平均身長」を出すようなものです。計算はできますが、その身長の人は、その部屋にいません。(この83人の記録の中での話で、日本人全体の話ではありません)
一つの物差しで測ると、何が起きるか
国は、生活習慣病の発症予防を目的として、エネルギーに占める各栄養素の割合の目標量を示しています(18〜64歳)。
| 栄養素 | 目標量(%エネルギー) |
|---|---|
| たんぱく質 | 13〜20(50〜64歳は14〜20) |
| 脂質 | 20〜30 |
| 炭水化物 | 50〜65 |
この範囲を83人全員に当てて「3つとも収まっているか」を数えると、16人(19%)。5人に1人です。数字だけ見れば、ほとんどの人がバランスを外していることになります。
しかし、この16人の内訳を見ると話が変わります。
16人は全員、一般的なバランス寄りの37人の中にいました。 糖質を抑える群37人と中間の9人からは、1人も出ていません。
これは当然のことです。炭水化物を意図的に減らせば、炭水化物50〜65%という範囲からは定義上必ず外れます。 外れるように食べているのだから外れる。それを「達成率0%」と書くのは、測定として意味をなしません。
つまり「19%」という数字は、栄養バランスの良し悪しをほとんど測っていませんでした。実質的に測っていたのは「炭水化物を50%以上とっているかどうか」の一点です。同じ範囲を、一般的なバランス寄りの37人だけに当て直すと、3つとも収まっていたのは16人(43%)になります。
身長170cmの人と145cmの人を混ぜて平均157cmの服を作り、誰にも合わないと嘆く——一つの物差しで測るというのは、そういうことでした。
つまり、こういうことです—— 国の目安では、炭水化物は50〜65%。糖質を控えている人は、そう食べているのだから、必ずこの範囲から外れます。 それを「できていない」と数えても、測れているのは食事の良し悪しではなく「炭水化物を50%以上とっているかどうか」の一点だけです。 実際、83人全員に当てると16人(19%)ですが、一般的なバランス寄りの37人だけに当て直すと、同じ16人が43%になります。 人が変わったのではなく、混ぜて数えるか、分けて数えるかで見え方が変わっただけです。(いずれもこの83人の中での割合です)
「目標量」は、個人の合否を決める線ではない
そもそも、この目標量は個人の食事に合否をつけるための線ではありません。厚生労働省の基準では、目標量は生活習慣病の発症予防のために集団が当面の目標とすべき摂取量として位置づけられています。集団に対する参照値であって、個人がその範囲外にいることが直ちに不適切を意味するものではありません。
適切な栄養バランスは年齢・体格・活動量・健康状態によって変わりますし、特定の食事法を意図して選んでいる人であればなおさらです。個別の判断は医師・管理栄養士にご相談ください。
本記事でも、以下は「目安」「参照線」として扱い、達成・未達成という言葉は使いません。
つまり、こういうことです—— 国が示しているのは、大勢をまとめて眺めるための参照線であって、あなたの食事につける通信簿ではありません。 範囲の外にいることが、そのまま「悪い食事」を意味するわけではない、ということです。ちょうどよい形は、年齢・体格・活動量・体調によって変わります。個別の判断は医師・管理栄養士にご相談ください。
二つの群で、唯一そろっていたもの
食べ方が真っ二つに割れているこの集団で、一つだけ、群を越えて共通していた項目がありました。たんぱく質です。
| 糖質を抑える群(37人) | 一般的なバランス寄り(37人) | |
|---|---|---|
| たんぱく質の実量(中央値) | 92.0g/日 | 80.3g/日 |
| 目安の下限(13%エネルギー)を下回った人 | 0人 | 0人 |
83人全員のうち、たんぱく質が目安の下限を下回った人は0人でした。実量で見ても1日あたりの中央値は83.9g、60gを下回ったのは3人だけです。
食べ方の方針が正反対に分かれていても、たんぱく質だけは両方の群でそろっている。食事を記録している人たちの間では、たんぱく質を確保するという一点が、食事法の違いを越えて共通の土台になっている——このデータからはそう読めます。
つまり、こういうことです—— 食べ方が正反対に割れているのに、たんぱく質だけは、どちらの側もそろっていました。 83人のうち、目安の下限を下回った人は0人です。 ただし、これは食事を記録している83人の中での話です。記録していない人もそうだ、とは言えません。量は写真からのAI推定値でもあります。「たんぱく質さえとれば大丈夫」という意味ではありません。
割合で見ると、見えなくなること
ここで、データの扱いについて一つ注意点を共有します。PFCの「割合」は、三つ合わせて必ず100%になる閉じた数字だという点です。
たとえば今回のデータで、たんぱく質の割合と脂質の割合の関係を調べると、相関係数は+0.56。「たんぱく質を多くとる人ほど脂質も多い」と読みたくなります。ところが、同じ83人を実量(グラム)で見ると、相関はほぼゼロ(−0.05)でした。
なぜズレるのか。誰かが炭水化物を減らせば、たんぱく質と脂質を1gも変えていなくても、その「割合」は自動的に上がるからです。+0.56は食生活の発見ではなく、割り算の性質を見ていただけでした。
実量で見ると、二つの群の違いはもっと単純です。
| 糖質を抑える群 | 一般的なバランス寄り | |
|---|---|---|
| たんぱく質 | 92.0g | 80.3g |
| 脂質 | 100.2g | 42.4g |
| 炭水化物 | 74.1g | 232.8g |
たんぱく質はそう変わりません。違うのは、糖質を減らした分のエネルギーを脂質で埋めているという一点でした。「たんぱく質を増やしたら脂質も増えた」ではなく「糖質を抜いた穴を脂質で埋めている」。まったく別の話です。
栄養バランスを割合だけで語ると、こうした取り違えが起きます。
つまり、こういうことです—— PFCの割合は、3つ合わせて必ず100%になります。ピザと同じで、誰かの取り分が減れば、残りの人の取り分は自動的に大きくなります。 だから「たんぱく質の割合が高い人は脂質の割合も高い」というのは、食生活の発見ではありませんでした。同じ83人をグラムで見直すと、その関係はほぼ消えます。 実際に起きていたのは、糖質を減らした分の穴を脂質で埋めているということです。
崩れているのは「人」ではなく「日」
ここまでは1人1か月の平均で見てきました。同じデータを1日単位で見ると、また景色が変わります。
- 1,262日のうち、3つすべてが目安の範囲に収まっていた日は213日(17%)
- 一方で、83人中48人(58%)が「3つそろった日」を1日以上経験している
- 同じ人の中でのたんぱく質の1日あたり最大と最小の差は、中央値で62g(四分位範囲46〜92g)
多くの人は「そろえられない人」ではなく、そろう日とそろわない日の振れ幅が大きい人でした。同じ人の中で、たんぱく質が日によって60g以上動いています。1か月の平均だけを見ていると、この揺れは平らにならされて見えなくなります。
カロリーの帳尻は合っていても特定の栄養素が不足しがちな状態は、「新型栄養失調」として知られています。カロリーは足りているのに栄養が足りないという状況が起きうるのは、平均では見えない日ごとの偏りが積み重なるためでもあります。
つまり、こういうことです—— 「そろえられない人」ではなく、そろう日とそろわない日の差が大きい人が多い、ということでした。実際、83人中48人は、3つそろった日を1日以上経験しています。 家計簿と同じで、1か月の平均だけを見ていると、使いすぎた日と使わなかった日がならされて、見えなくなります。(1,262日分の記録から見た、この83人の傾向です)
「一人ひとりに合った目標」は、精神論ではない
今回の集計から言えることを整理します。
- 同じ食事管理アプリの利用者の中に、方針の異なる食べ方がほぼ半々で共存している
- その二つを一つの固定した目安で採点することは、原理的にできない
- それでもたんぱく質という共通の土台は存在する
- そして崩れは「人」より「日」に現れる
「一人ひとりに合った目標を」という言葉は、しばしば聞こえの良いスローガンとして使われます。しかし今回のデータは、それが心構えの話ではなく、測定上の必要であることを示しています。固定の基準を全員に当てれば、意図して別の食べ方をしている半数を機械的に「外れ」と判定してしまうからです。
つまり、こういうことです—— 「一人ひとりに合わせる」は、やさしさや心構えの話ではなく、測り方の話です。 全員に同じ一本の物差しを当てると、別の食べ方を自分で選んでいる半分の人が、自動的に「外れ」に分類されてしまいます。 それは食事の評価ではなく、物差しの都合です。(この83人の記録から言えることであり、日本人全体の話ではありません)
VITLが固定の栄養目標ではなく、その人の状況とその日の流れによって変わる代謝スコアで食事を見ているのは、この問題への一つの答えです。同じ食事でも、朝に何を食べたか、その人が何を目指しているかによって、意味が変わる。制限や我慢ではなく「次の一食で何を足すか」という形で提案する設計にしています。
集計方法の詳細
再現性のため、集計手順を明記します。
- VITLの日次集計データ(利用者ごと・日ごとのカロリーとPFC総量)から、2026年6月1日〜6月30日の全レコード2,061件を取得
- 社内テスト用アカウント2件を除外(残り2,042件)
- 記録が1日を通してそろっている日に限るため、記録食事数が3食以上かつ総カロリーが0より大きい日に限定
- 短期間の記録から傾向を語らないため、上記の条件を満たす日が5日以上ある利用者に限定(83人・1,262人日)
- 各日のPFC比率を、たんぱく質4kcal/g・脂質9kcal/g・炭水化物4kcal/gで換算して算出
- 利用者ごとに日々の比率を平均し、その利用者単位の値を集計対象とした
- 群分けは、上記6で得た利用者ごとの炭水化物の割合を、40%未満/40〜50%/50%以上の3区分に機械的に分類(食事法の申告に基づくものではありません)
公開しているのはすべて集計値であり、個人の記録・写真・属性は一切含みません。
VITL(バイタル)について
VITL(バイタル)は、ゼロジム369株式会社(福岡)が開発・運営するAI食事管理サービスです。食事の写真を送ると、AIがカロリーとPFCを推定し、栄養バランスを点数で返します。サービスの概要はVITL公式サイト、および「VITL(バイタル)とは」をご覧ください。
同名の他社・他サービスとの違い
「VITL」という名前のサービス・業者は世界に複数存在します。日本のAI食事管理アプリVITL(vitl.jp・運営: ゼロジム369株式会社)は、以下のいずれとも資本・運営とも一切関係ありません。なお「VITL」は日本国内においてゼロジム369株式会社の登録商標です(商標登録第7053784号)。
- 英国のVitl(vitl.com) — パーソナライズドサプリメントや同名のカロリートラッカーアプリを提供する英国企業で、日本のVITL(バイタル)とは無関係の別会社です。
- 投資業者「VITL Financial Trading Limited」 — 金融庁は令和8年(2026年)5月、無登録で金融商品取引業を行う者としてこの名称を公表しています(出典: 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。日本のAI食事管理アプリVITL(vitl.jp)はこの業者と一切関係がなく、投資・金融商品を一切扱いません。
出典・一次情報
- 厚生労働省「食事による栄養摂取量の基準」(平成27年3月31日厚生労働省告示第199号・令和6年厚生労働省告示第339号により全部改正)
- 別表第二 たんぱく質の食事摂取基準(目標量 13〜20%エネルギー、50〜64歳は14〜20%エネルギー)
- 炭水化物の食事摂取基準(目標量 50〜65%エネルギー)
- 脂質の食事摂取基準(目標量 20〜30%エネルギー)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
- 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」
- VITLとは(サービス概要・機能・料金・運営会社)
- 新型栄養失調とは(定義ハブ)
本記事はVITL利用者の食事記録を匿名で集計した統計情報であり、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。集計値はVITL利用者という特定の集団の記録に基づくもので、日本人全体の摂取実態を示すものではありません。栄養素の摂取目標は個人の年齢・体格・活動量・健康状態によって異なります。特定の食事法を推奨するものでもありません。食事管理による変化には個人差があります。